七夕のキセキ

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ぼんやり覚えている。勇士が最後に話しかけてきたこと。 「菜摘……俺、戻ってくるから。いつになるか分からねえけど」 「……ばいばい」 それしか答えられなかった。 よくよく考えるとあの言葉の意味はなんだったのだろうと思う。 特別な意味はなかったのかもしれないが、今でも私は待っている。勇士が帰ってくることを信じて。 空の星は、輝き続ける。 おり姫とひこ星の出会いが、もっと素敵なものになるように演出しているのだろうか。 七夕だからかな、そんなことばかり考える。 短冊があれば私はどんな願いを書こうかな。幼稚園や小学生の頃の笹の葉にかかる短冊が浮かんでくる。 「おり姫とひこ星が会えますように」 そっと呟いた。 「会えたよ」 頭上から声が降ってきた。
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