約束の夏

5/24
前へ
/304ページ
次へ
「何が余裕だってー?」 お婆ちゃんを喜ばせようとついた嘘なのに、私の成績を知っているお母さんは目をキラリと光らせた。 ギクリと心臓が跳ねる。 お婆ちゃんの前で、実は頭悪いんです、なんて言えるわけがない。 そう考えると少し不安になってきた。馬鹿な私は夏休みも勉強しないと、どこの高校にも受からないんじゃないだろうか。 そうすると、本当にお婆ちゃんの家に来れなくなってしまう。 それは嫌だなぁ。と、思いつつも勉強なんてする気は更々なかった。 「香苗、暇だったら散歩しておいで。凄く気持ちいいのよ」 お母さんと一緒に夕飯の支度をしていたお婆ちゃんが、暇そうにテレビを見ていた私に言った。 どうしようかな、と頭の中で考えたが、お父さんは爆睡中で相手してくれないし、確かに暇なのだ。 「分かった。そうする」 「6時までには戻ってきなさいよ」 頷いた私に、お母さんはそう言った。
/304ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1866人が本棚に入れています
本棚に追加