約束の夏

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本当に気持ちいい。 私は辺り一面田んぼに囲まれた道を歩きながら、何度もそう思っていた。 都会に暮らしている私は、いつもこんなのんびりしている田舎に憧れてしまう。 度々ある民家も、どれも和を感じさせるもので、見ているだけで和やかな気分になった。 お婆ちゃん、一人でも寂しくないって言っていたけど、本当は寂しいんじゃないのかな。 こんなに人が少ない場所だったら、他人との会話があるとも思えないし。 足腰弱っているから、買い物だって、日常生活だってきついだろう。 私たちがこっちに引っ越すなんてどうだろうか。 そんな考えが浮かんだが、やっぱり駄目と諦める。 お父さんやお母さんだって仕事があるし、私も学校がある。今の友達と離れたくないし、受験という一大イベントが待ち受けているときに環境を変えたくない。 お婆ちゃんには、悪いけど……。 私は何もできない自分に、悔しさを感じた。
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