約束の夏

9/24
前へ
/304ページ
次へ
中2にもなって迷子なんて、本当情けない。 泣きそうになり、ブランコを漕ぐ足を止め、俯いた。 「どうしたの?」 急に背中から声をかけられ、私はびっくりして振り返った。 後ろには見たこともない男の子。 同い年か、年上くらいの顔立ちで、優しい笑みを浮かべていた。 いや、でも、優しそうだからと言って気を許してはいけない。最近の世の中は物騒だ。公園で女の子が襲われるといったことはよく聞く。 私は自然に身構えながら言った。 「いや、別に何もないです」 「そう?じゃあ、何でそんな泣きそうな顔してるの?」 そう聞かれ、口ごもる。 私、そんなに顔に出ていたのかな。恥ずかしくもなった。 「大丈夫だよ。言ってみて」 男の子はさりげなく隣のブランコに座り、優しく言った。 さっきまで不安でいっぱいだったのに、急に胸が違う感じで締め付けられる。 ドキドキした。 私は、男の子を直視できなくて、目を伏せたまま打ち明ける。 「い、家が分からなくなっちゃって……」 顔が熱くなるのが分かる。絶対馬鹿な子だと思われた。
/304ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1866人が本棚に入れています
本棚に追加