約束の夏

18/24
前へ
/304ページ
次へ
次の日も、私は公園にいた。 お母さんとお父さんとお婆ちゃんは、昼過ぎに出かけて、夕方まで帰ってこない私を不思議がっていた。 質問されたけど、彼のことは言えなくて、散歩に夢中になったと嘘をついた。 どう考えても無理がある嘘なので、怪しまれただろうけど、誰も問い詰めようとはしなかった。 ただ、お婆ちゃんの寂しそうな顔が気掛かり。 折角遊びにきたのに、あまり相手をしてあげられなくてごめん。 私は心の中で謝罪した。完璧に、私の中で優先なのは彼だった。 「いつまでこっちにいるの?」 だいぶ自然に会話できるようになった私たち。彼が唐突に聞いてきた。 そういえば……。 私はすっかりこの土地の人間ではないことを忘れていた。いつまでも彼と過ごせるわけではないのだ。 それが分かった途端、胸が痛くなる。 「あと、2日……」 タイムリミットは意外にも、すぐそばまで迫っていると実感する。 「2日か」 そう言った彼の表情を見たかったが、逆光でよく見えなかった。 少しでも寂しいと思ってくれるかな。 「じゃあさ、あと2日、この公園で毎日話そうよ」 その提案に、私は目を輝かせ胸を踊らせた。 彼が、私に毎日会いたいと思ってくれている。そんな風に都合良く解釈してはいけないかもしれないけど、そう思わずにはいられなかった。 「うん!」 彼の言葉一つで、沈んだ気分もあっという間に晴れる。
/304ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1866人が本棚に入れています
本棚に追加