約束の夏

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「お婆ちゃん」 名前を呼んだのは、心配そうな顔をしたお婆ちゃんだった。私に駆け寄ってきて、安心したようにため息をつく。 「いきなり出て行って帰ってこないから心配したよ。……どうしたの?」 お婆ちゃんの優しい声に、いつのまにか涙がとめどなく溢れていた。 会いたいあの人に。 でも、もう二度と会えない。 「香苗は、ここで何かとても大切なものを見つけたのね」 お婆ちゃんの言葉に、強く頷いて、私はいつまでも涙を流し続けた。 さようなら。 名前も知らない、好きな人。 いつかあなたに会ったことを、忘れる日はくるのだろうか。この想いが消える日はくるのだろうか。 分からない。 あなたと一緒にいた期間は、とても短いもので、人生に換算すると小数点以下の時間かもしれないけど、私の想いはとてつもなく大きいものだった。 私は段々と移り変わる景色を見たくなくて、静かに目を閉じた。
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