透明な彼女

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家を出た瞬間、申し訳なさそうな顔の亮太が振り返った。 「ごめんな」 「何で亮太が謝るの?お母さんのこと、私別に気にしてないからいいよ」 全く気にしていないと言ったら嘘になる。だけどそんな風に謝られるくらいなら、私は幾らだって我慢するよ。 「そっか」 相変わらず顔色の優れない亮太と、妙な不安と頭痛を抱える私。 何だかあまりデートに適した状態じゃないけれど、取り敢えず私たちは歩き始めていた。どこに行くか分からないので、私は亮太の背中を追うだけ。 辺りの景色を見渡しながら歩いていると、とても懐かしい感情が溢れてきた。 そしてそれと同調するように、頭痛は更に激しさを増した。 「着いた」 めまいと吐き気に襲われ、朦朧としながらもたどり着いた場所は、なんら変わりない住宅地の中だった。
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