ゆっくり。

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「おーい……朝っぱらから、なにメソメソしてんだよ」 笑いながら教室に入ってきたのは、啓介君だった。美香は啓介君を見ると、迷わず彼に駆け寄る。 もう胸は痛まない。 2年前のあの日、私は人生でこれだけ辛いことがあるのかってうちひしがれていた。2人に心配かけてはいけないから、陰でこれでもかってくらい泣いた。 そしてしばらく空元気の日々が続く。だけどそんな私を支えてくれる人がいた。 「お前ら朝っぱらからいちゃつくなよ」 いつもの仏頂面で現れたのは泉君。啓介君と美香を見て、あからさまに欝陶しそうな顔をした。 「いいだろ。明日卒業なんだし」 「泉、自分が欲求不満だからって当たんないでよ」 啓介君と美香のスーパータッグで責められる泉君。 なんだかんだ、とても仲が良い3人。バラバラだった幼なじみは、今では元通りに戻っていた。欝陶しそうな泉君も、内心嬉しいに違いない。
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