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「あーうぜぇ。菜月行こう」
「え、あ……うん」
泉君は私の腕を掴むと、返事をする前に強引に腕を引いていった。
こうやって、いつも私を導いてくれる。私の嫌な思いも、悲しい気持ちも、全て分かって支えてくれたのがこの人、泉君だった。
やってきたのはもちろん、あの裏庭だった。
木を背もたれに、2人で地べたに座る。
「……明日卒業か」
ぽそっと呟いたのは、意外にも泉君。私は笑いながら言った。
「泉君も寂しかったりするの?」
冗談っぽく言ったつもりなのに、隣から視線感じて振り向くと、至って真剣な顔をした泉君。
その眼差しに、私は一瞬呼吸を忘れた。
「当たり前だろ。お前と会う時間少なくなるんだから」
君は知らない。当たり前のように囁く言葉が、いつも私の鼓動を早くしていることに。
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