笑顔

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俺は慌ただしい声や物音で目を覚ました。何事だと思いながらふと時計を見る。 「げっ!」 そして思わずそう声を出していた。 時計の針は午後10時27分を正確に示している。どれだけ寝てるんだ俺は、と変な脱力感に襲われた。 まだ風呂も入ってなければご飯も食べてない。ましてや宿題なんてしているはずがなかった。 取り敢えずリビングに降りて、晩飯を済まそうと考える。リビングに行くと、父さんと母さんがコートを羽織り出掛ける用意をしていた。 その表情からは焦りの色が見て取れる。 「何事?」 俺がそう聞くと、母さんが勢いよく振り返った。 「紗耶香ちゃんがまだ帰ってこないんだって。美智代ちゃんがさっき家に来てね、紗耶香が帰ってこないんだけど知らないかって顔面蒼白なのよ」 美智代ちゃんとは紗耶香の母親のことだ。 それでこんなに慌ただしくしているのか。紗耶香が帰ってこないと聞いた俺は至って冷静だった。 凄い取り乱しような母さんたちに聞いてみる。 「携帯は?」 「それが繋がらないみたいなのよ」 それを聞いてさすがの俺も少し焦った。
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