笑顔

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「こんなとこで何やってんだよ」 俺がそう聞くと、紗耶香はそっぽを向いた。口を固く閉ざし、何も話す気はないようだ。 「お前さ、みんなに心配かけたんだから、理由くらい言えよ」 我ながら似合わない正論。だけど俺は紗耶香が最近、なににどうして悩んでいるのかを知りたかった。 「誰も頼んでないじゃん」 「お前な……」 「誰にだって言いたくないことくらいあるでしょ!」 紗耶香の態度にキレかけた時、まさかあっちからキレてくるとは思わなかった。 ブランコから勢い良く立ち上がり、俺を力強く睨む。そんな風に睨まれる意味が分からない。 俺がこの寒い中、どれだけ走り回ったかをこいつは知らない。 「……もういい。お前とは一生関わんねーよ」 俺はあからさまに盛大なため息をついてみせると、紗耶香を置いて家に帰った。 本当はそんなこと言いたくなかったが、紗耶香が俺に何も言ってくれないことが悔しくて堪らなかったのだ。
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