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翌日になったが、紗耶香が俺の前に現れることはなかった。もしかしたら少し期待していたのかもしれない。
昨日の朝のように、「ごめん」って謝ってくることを。
「今日は物凄く不機嫌だな」
教室に入ると、優が真っ先にそう言ってきた。自分ではそんなこと思っていなかったのだが、言われてみればそうなのかもしれない。
言われて自分がいらいらしていることに気がつくなんて。
「また紗耶香ちゃん関係?」
ニヤニヤと嬉しそうなこいつの顔はもう見飽きた。弁解するのも面倒くさいので、睨んで目をそらすと、慌てた奴の顔が目に入る。
「ご、ごめんって!そんなにキレんなよ」
謝るくらいなら最初からするな。心の中で言っておき、やっぱり俺は黙っていた。
「どうしたんだよー……」
弱々しい優の声が耳に入った直後だった。
教室の前方のドアが乱暴に開けられた。クラス中が驚いてそちらに視線が集まる。
立っていたのは見覚えのある女子だった。
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