笑顔

15/28
前へ
/304ページ
次へ
「雅人君……いる!?」 大声でその女子が叫ぶ。俺はまさか自分が呼ばれるとは思っていなかったので、返事もせずにフリーズしてしまっていた。 するとクラスの誰かが「あそこにいるけど」と俺を指差す。それで我に返り、クラス中の注目を浴びながら立ち上がった。 「なに?」 「ちょっと来て!」 彼女は俺の質問に答えることなく、凄い剣幕で廊下へと連れ出した。クラスの奴らの視線から逃れることができて良かったのだけど。 「なんだよいきなり」 「紗耶香を助けて」 彼女はさっきまでの強い態度とは打って変わり、泣きそうな顔で俺に懇願してきた。紗耶香の名前が出たことと、泣きそうな女に戸惑って言葉が出ない。 「私は紗耶香の友達なんだけど……」 それで見覚えがあったのか。確かにいつも一緒にいる奴だ。 「お願い!後で説明するから取り敢えずついてきて!紗耶香を助けて」 俺は何が何だかよく分からなかったが、この女があまりにも真剣な顔で言うので従うことにした。
/304ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1866人が本棚に入れています
本棚に追加