笑顔

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屋上のど真ん中、1人の女が横たわっていた。それだけではなく、体格のいい男がその女に暴行をくわえているのだ。 殴って、蹴って、殴って……。 女だというのに手加減している様子はない。女はか細い悲鳴をあげながらも、決して逆らおうとはしなかった。 俺はそれをただ、唖然と見ているしかできない。 あの女は紗耶香だった。 そして男のほうは、噂になっている高梨。 それが分かった途端、考えるよりも先に体が動いていた。 「なにやってんだよ!」 もしかしたら人生で1番キレたかもしれない。体の奥底から熱い怒りの念が沸き上がってきた。例えるならば火山が噴火したのだ。 「は?お前なんだよ」 高梨はいきなり現れて怒鳴る俺に、とても強気な姿勢を見せた。内心少しこいつに恐怖心を抱いたが、ここで引き下がるわけにはいかない。 「雅人……やめて」
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