笑顔

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反論しようとした俺に、紗耶香が消えそうな声で言った。振り返ると、唇から血を流しながら首を振るんだ。 「やめて」と、俺に必死に懇願する。 「ほら、こいつがこう言ってんだろ。関係ねぇ奴は失せろ」 高梨は紗耶香が止めたことをいい事に、しれっとそんな風に言ってのける。 ここで黙ってこの場を去るなんて、できるわけねぇだろ。 「ふざけんな。紗耶香に手出すんじゃねぇよ」 「あ?紗耶香は俺の女だけど?」 高梨の余裕不敵な笑みがカンに障る。俺をおちょくっているのか、あえて穏やかに話すところがまた挑発しているとしか思えない。 「てめぇっ……」 流石の俺でも堪えきれずに、右の拳を振り上げた。そして体中の全ての力をその1点に集中させ、思い切り振り下ろした。
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