笑顔

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「あ、紗耶香!大丈夫?」 屋上を出ると、下でさっきの女が待っていた。ぼろぼろの紗耶香に駆け寄り、優しく抱きしめる。 「なんで、紗耶香はあんな奴と付き合ってんだよ」 俺はこの空気なのだが、最大の疑問を口にした。紗耶香の友達が、今は聞くなというような目で俺は見てきたが関係ない。紗耶香に聞いているんだ。 「……可哀相な人なの。自分がコントロールできなくて。どうしても好きなんだから、仕方ないじゃん」 紗耶香は本気で高梨に惚れていた。 高梨が可哀相だと言うけれど、お前の状況の方がよっぽど可哀相だと思う。 なんであいつなんだ? 俺だったら……。 ふいにそんなことを考えた自分。俺はどうしてこんなにも腹がたっているんだ。 なんとなく、分かった気がした。
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