笑顔

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「別れろよ、あんな奴とは」 紗耶香のためでもあり、俺のためでもある発言。予想はしていたが、紗耶香が簡単に頷くはずはなかった。 「そんな風に言わないで。私があの人を変えるの……雅人には関係ない!」 胸が痛む。 関係ないと言われることが悔しい。あんな奴にうつつをぬかす紗耶香が歯痒い。 「関係なくねぇよ!紗耶香……俺があいつの代わりになるから」 自分でも何を言っているのかわからなかった。ただ、何も考えずに口にしたこの言葉は、きっと俺の本心だったんだ。 「雅人……それ、どういう……」 どういう意味なのかは自分でもよく分かっていた。もう後戻りはできない。 「紗耶香が好きなんだよ」 幼なじみという関係が、音をたて崩れていった。
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