笑顔

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家に帰り、いつもなら紗耶香の宿題を写しにいく時間になる。だけど今日は足が動かなかった。行けるわけがない。 紗耶香はあの後、まるで何も聞かなかったかのように目をそらし、友達と一緒に教室に戻っていった。 完全なる、拒否。 俺の気持ちは受け取れないと、無言で訴えていた。 こんな風に、自然に話すことができなくなるくらいなら、自分の気持ちなんて言わなかったほうが良かったのか? そんなことばかり考えていて、何をしても上の空。ただ、後悔と痛みだけが俺を襲う。 うだうだ悩む自分がらしくなくて、気持ち悪い。 「くそ!」 俺は勢いよく立ち上がり、目指した場所は紗耶香の家だった。 インターホンを押すこともなく家にあがり、おじさんとおばさんに挨拶をする。そしてすぐに紗耶香の部屋を目指した。 いつもと同じようにを心がけているのに、何故か脈が激しく波打つ。緊張を振り払い、部屋の扉を開けた。
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