笑顔

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「……あ」 紗耶香と目が合う。 こいつ、何してるんだ? 俺は自分の目を疑っていた。 「雅人……」 紗耶香が気まずそうに呟く。片足を窓の外にほうり出し、まるで部屋から脱出しようとしているようだ。 いや、そうしようとしているのか? 「なにやってんだよ」 「別に」 こんな状況で何もないはずがない。こそこそと家を抜け出して、どこに行こうっていうんだよ。 なんとなく予想はついているけれど。 「あいつのとこ、行く気か?」 紗耶香がびくりと体を揺らした。図星。それはもう一目瞭然だった。 こんな夜中に呼び出すなんて、高梨はどうかしてる。いや、それに従う紗耶香もどうかしてるな……。 「もちろん、俺が黙ってるはずないけど」 ハッキリとそう言うと、紗耶香はあからさまに反抗の目を向けた。そんな目で見られたって、お前をあいつのところに行かせたくないんだよ。
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