笑顔

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「なんなの雅人。親でもないくせに、そんなこと言われる筋合いないよ」 それはそうだ。 ただ幼なじみだからって、他人は他人。紗耶香がすることに口を出す権利なんてない。 だけど…… 「俺はお前が好きなんだよ。あんな奴のところに行かせられるか」 もう恥ずかしいなんて気持ちはない。必死だった。紗耶香の気を引くのにただ必死だった。 お前を苦しめたいんじゃない。 ただ……お前の笑顔が見たいだけ。 「雅人……ごめん」 今度は流さずに、ハッキリと断られた。やっぱり胸は激しく痛む。優しい奴だから、幼なじみの俺を傷つけることは自分をも傷つける思いだったんだろうな。 だから、彼女はまた泣くのだ。 「私、あの人じゃなきゃ駄目なんだ」 そんなにも誰かを強く想うお前が好きだよ。 だから、行けよ。 俺は無言でそう訴えた。流石幼なじみ。そんな俺の想いを受け取り、窓から出ていった。
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