愛さなくていいよ

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ある日、遊馬先輩が告白されていた。その現場を見て、思わず聞き耳をたててしまう。 なんていって断るんだろう。 いや、断らないかもしれない。私からあの子に乗り換えるつもりかも。 不安定な関係は、いつも私を不安にさせた。いつ崩れてもおかしくないのだ。こんなにも脆い、ふたりの絆。 「ごめん。俺、彼女いるから」 ……彼女だって。私、彼女なんだって。 なんてことのない、当たり前の返事。女除けという名の彼女の肩書き。分かっているけど、凄く嬉しくて涙が溢れた。 物陰で声を押し殺して泣いていたら、背中から伸びる黒い影。遊馬先輩に気付かれてしまった。 びくりと肩を震わせると、無理矢理顔の向きを変えさせられる。 「なに泣いてんだよ」 「なんでもないよ」 「嘘つくな」 遊馬先輩に逆らったら、私は捨てられる。その恐怖から、いつも反論なんてできないのだ。 「嬉しかったからだよ」
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