後輩くん

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とある部活の日。 後輩くんが練習中に怪我をした。先輩が投げたボールを素手で受け取るという、なんともあほなミスを犯し、突き指をしたのだ。 その時、たまたま手当てに当たったのが私。テーピングを施したり、氷を当てたりしていると、前から感じる視線。 「……なに?」 素っ気なくそう言うと、いきなり目を輝かせた。意味が分からず、眉間にシワがよってしまう。 「先輩、俺のこと可愛いって言わないんですか?」 「……はい?」 いきなりの質問に思わず無愛想になる。発言がナルシストとしか思えなかった。 今現在の印象は最悪。 「いや、俺、昔っから可愛いって言われるのが凄い嫌なんですよ」 後輩くんの意外なコンプレックス。可愛がられているときも、いつも変わらない笑顔だから、てっきり嬉しいのかと思っていた。 「だから先輩みたいに、俺を可愛がらない人初めてっす」 君はそう言うけど、その笑顔を私は可愛いと思った。
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