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「今更……かもしんねぇけど、俺はやっぱり……」
ドキドキと胸が高鳴る。
雰囲気で、これから何を言われるのかは予想できた。
「菜月が好きだ。ずっと一緒にいたい」
素敵な愛の言葉だった。
この歳で、まるでプロポーズでもされているみたい。嬉しかった。凄く嬉しかった。
なのに、私の中では素直じゃない私との葛藤が始まっていた。
私、本当に啓介君のこと諦められてるの?
もしかしたらまた騙されているんじゃないの?
私はもう啓介君に抱かれた女だよ?
親友って関係が崩れてギクシャクしちゃったりしないの?
心から「はい」と叫びたいのに、そんな不安ばかりが頭に浮かんで、返事を返すことができなかった。
「やっぱりな」
すると悲しい瞳で泉君は笑った。作り笑いだってことがひしひしと伝わってきて、胸が痛い。
「お前は俺のことなんて、見てないもんな」
違う。そんなことない。
そう言えばいいのに、中々言いだせない弱虫な自分。
「困らせてごめん」
泉君はそう言うと、私に背を向けて歩き出した。
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