後輩くん

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私は優子の言うことを毛頭、信じる気はなかった。だが、あまりにも凄い剣幕で言うので、「分かったから」と取り敢えず頷く。 後輩くんが私のこと好きなんて、有り得るわけないのに。 こんなに冷めた女に惚れる男はどうかしてる。自分で言うのも、なんなのだけど。 「先輩!」 噂をすれば後輩くんがやってきた。このタイミングはまるで、チャンスを見計らっていたかのよう。 優子も私も驚いて振り返った。 「あーっと!私、用事思い出しちゃった」 わざとらしい棒読みで、優子がこの場を立ち去っていく。どうしてそんなあからさまなことするかな。 第一、実際後輩くんはそんなこと思ってもいないのだから、こんなことされても迷惑なだけだろう。 「先輩に話したいことがあるんですけど」 にっこりと笑う後輩くん。 若干赤い頬。 「なに?」 さっきの会話のせいで、自分の素っ気なさがパワーアップしていた。優子のせいで変に意識してしまう。
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