後輩くん

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「俺、先輩が好きです!」 ………… 「……はい?」 耳を疑う。きっと幻聴だったのだろう。耳の穴を最大限に開いて、再度言葉を聞き取ろうと試みる。 「だから、先輩が好きです」 聞き間違いじゃないみたい。本当に私のことを好きって言っている。 後輩くんの顔は赤く、そしていつものように可愛らしい笑顔。本気なのだろうか。必死に表情から読み取ろうとする。 あ、分かった。 この好きって言うのは、恋愛対象としてではなく、友達またはお姉さんなどに対する気持ち。ごく当たり前の感情なんだ。 「私も好きだよ」 それならば、私も応えられる。恋愛感情だったのなら無理だったけれど。 「え、それじゃあ……」 「後輩くんは本当の弟みたいだからね」 その瞬間、後輩くんの顔が強張るのが分かった。意味が分からず首を傾げると、渇いた笑いを浮かべた。 「あ……そうですね」 なんでそんなに、悲しい顔で笑うのよ。
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