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それから本当に、後輩くんは私につきまとわなくなった。
話し掛けるどころか、目さえも合わせてくれない。でも、彼はいつもと変わらない笑顔だった。
「あんた、後輩くんと喧嘩でもしたの?」
優子だけでなく、野球部のメンバーは急に変わってしまった私たちにそう聞いてくる。喧嘩したわけじゃない。なんなのだろう。
答えようがなく、ただこう言うしかない。
「別に何も」
これで良かったんじゃないのかな。たまには鬱陶しいと思うこともあったし、周りから変な風に勘違いされることもない。
これで良いんだ。
だけど、だけど、何でこんなに胸が痛いのだろう。いつも隣にあった笑顔が遠い。
「先輩!」
って呼ぶ、彼の声が聞こえない。
違和感。
私はいつのまにか、後輩くんが近くにいることが当たり前になっていたいみたい。
今までの日常に戻るのだ。すぐに慣れる。すぐに慣れるから。
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