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「先輩……」
「ん?」
周りの騒ぎの中で、二人だけは落ち着いていた。後輩くんの声しか聞こえない。
「本当ですか?」
「うん。鈍感でごめんね」
目を見開いて、私の顔を見る後輩くんは、少しだけ格好良く見えた。
ふたりだけの空間には、何の音もなく、ふたりの声だけがこだまする。
「今度から“後輩くん”じゃなくて、名前で呼んでくれますか?」
彼の小さなお願い。
きっとそう呼ばれる度に、わたしたちの年齢差を感じていたんだね。きっと私もそう。無意識のうちに体中に染み込んでいた。
それももう、終わり。
ふたりはただの先輩と後輩じゃないのだから。
「……淳士」
その時、彼は私が望んでいた最高の笑顔を見せてくれた。
end
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