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「百合、ぼうっとしすぎ」
「え?あぁ、ごめん」
呆れた顔で私を見ている、前の席の花。プリントを持って私に差し出している。
慌ててそれを受け取ると、後ろの席に素早く回した。
裕一がいなくなってから、もう1年が経った。
中学3年生だった私は、高校生になっていた。親友の花と同じ高校に受かって、毎日を平然と過ごしている。
裕一が死んでから、私は涙を流したことがない。
彼女失格だと思われても仕方ないが、悲しくないのだ。目を閉じればいつでも裕一はそこにいる。
あの交差点で「じゃあな」って手を振ってる。
裕一の時が止まったように、また私の時もあの日で止まっている。
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