さよなら

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私はいつも裕一の面影を探している。 中学生の頃みたいに、彼の机があって、そこに座って騒いでいる裕一が、今もどこかにいるんじゃないかと。 「また、きょろきょろしてる」 花が言った。花を見ると、その目はとても可哀そうな目をしていた。 同情されている。可哀そうだと思われているのは自分でも分かった。 「誰探してんの、百合」 分かっているくせに、そう聞いてくる花に嫌気がさし、私は「別に」と素っ気なく言って教室を出た。 花とは中学からの親友だが、裕一がいなくなってから、その仲は微妙になっていた。 高校も一緒に受けたというより、私が選んだところを花が選んだのだ。 心配してくれるのはありがたいけど、私は全然可哀そうなんかじゃない。裕一は今も側にいる。
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