さよなら

6/25
前へ
/304ページ
次へ
廊下の窓を開けて涼んでいると、隣に誰かが立った。横目で見ると、クラスメートの翔。高校でできた男友達。 「百合ってよく1人でたそがれてるよな」 笑いながら私の真似をして、空を眺めている。 「悪い?」 「別に。何考えてんのかなって思って」 翔は性格もさばさばしているし、いい奴だと思う。だけど裕一に悪いから、ちゃんと一線をおいている。 「なぁ、百合って彼氏いねぇんだろ」 「だからいるってば」 「花はいないって言ってたし」 また花か。余計なこと言わないでほしい。私にはちゃんと彼氏がいるのに。裕一がいるのに。 「いるの。大好きな人が。私はその人だけを一生愛し続ける」 正直、翔が私に好意を持っていることはなんとなく分かっていた。だからこそキッパリ言ってあげなくてはならない。 私には裕一しかいない。 裕一しかいらない。
/304ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1866人が本棚に入れています
本棚に追加