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慶が高校初マウンドにあがってから
早1ヶ月が経った
主力組は実戦練習を行っている
その他は補助や自主練
1年は基礎体力作り
慶の姿もそこにあった
慶はあの日
期待をして帰った
あれだけの投球をしたのだから
次の日からは
レギュラー組として参加できるのだろうと
しかし
次の日から
1年は基礎体力作りに入った
慶も例外ではなかった
(はぁ~…
期待した俺が馬鹿だったか)
中西の思惑通り
慶はボールを握っていない
相当なストレスが溜まる
「なぁ
佐藤?」
「ん?」
「練習終わって
こっそりキャッチボールしない?」
話し掛けてきたのは
田中 亮
捕手
右投げ右打ち
「いや
駄目でしょ」
なぜしてはいけないか
体力作りの初日
緒方に
「1年生は
体力作り終わるまで
ボール触っちゃ駄目だからねぇ
家に帰ってもだよ
こっそり触っても
僕には分かるからね」
と言われたのだ
そう
慶に触らせない為に
1年全員道連れにしたのだ
「いいじゃんっ
しようぜっ」
どうしよう…
キャッチボールはしたいが
まぁ
ちょっとくらいは
いいかな…
1ヶ月も経ってるんだし
「よし
分かった」
「よっしゃ!
サンキュー」
どうやら
田中は相当な欲球不満だったらしい
そして
練習後
「じゃ
始めるか」
といって
グラブをはめた田中
慶もグラブをはめた
しかし
「何してるの?
佐藤くん」
背後から近づいてくる声
紛れもなく
緒方だ
「まさか
キャッチボールをしようとしてるわけじゃないよね」
緒方は言う
「えっ
いや…」
慶は焦った
「あ-あ
約束は守るためにあるんだけどなぁ
佐藤くん
田中くんもだよ?」
田中は
完全に固まってしまっている
緒方が溜め息をついた
「約束を破った人には
罰を与えないとねぇ」
一時の
沈黙
この後
緒方から
慶の予想もしない言葉が
発せられた
「全力投球してもらおうか」
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