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『国中の娘を呼んで、私の前で歌わせろ。』
それが城に着いたカインの第一声でした。
家臣は勿論、大臣も驚き、口々に理由を尋ねました。
しかし、
「理由は言えん。ただ、どうしてもそうする必要がある。」
王子はこう言って一向に理由を言おうとはしませんでした。
大臣は不信に思いながらも、王子が「責任は一切私がとる。」と断言したので、仕方なくすぐさま国中の娘を呼ぶ手配をしました。
次の日、国中にはこんな立て札がたちました。
“国中の娘は城に来て歌を披露する事。歌を披露した者には一人金貨三枚を与える。また、城に来なかった者の処へは、城の者が直々に訪問し歌を聞くが、その場合は一人金貨一枚を与える事とする。”
これを見た国中の娘達は我先にと城へ向かいました。
なにせ、歌えばお金が貰えるのです。
金貨三枚と言ったらそれなりのお金なので、歌うだけで貰えるのなら貰わない手はありません。
こうして、城には続々と娘達が集まってきました。
ある者は上流階級のお嬢様、ある者は中流階級の女性、ある者は貧民の女・・・。
カインの前には次々と娘がやって来て、歌を披露していきました。
これだけ集まれば、あの声の女性(ひと)も見つかるだろう。
カインはそう思って、一生懸命娘達の歌に耳を傾けていました。
―――――ところが・・・。
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