青年の憂鬱

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歌が上手い女性(ひと)ならいくらでも居ました。 しかし、砂浜で聞いたあの美しい歌声が出せる者は一人も居なかったのです。 「そんなはずはない・・・!」 王子は焦りました。 そして最後の望みを託して、城に来なかった娘達の所へ赴きました。 しかし、その多くは重い病気にかかったりしていて、とても歌なんか歌える状態ではなかったのです(カインはそういう家に、こっそり金貨十枚を置いていくことを忘れませんでした)。 ほんの時たま歌える娘がいても、やはり、それはあの浜辺で聞いた歌声とは別の物でした。 こうして、沢山のお金と時間を費やした王子の歌姫探しは失敗に終わりました。 カインは歌姫が見つからなかった事が悲しくてたまりませんでした。 「あの歌声さえあれば毎日を穏やかに過ごせると思っていたのに・・・」 カインはすぐに見つかると思っていたぶん、大きなショックを受けてしまいました。 それに、あの歌声を聞かせれば大臣や国王にも、この歌姫探しを納得させる事が出来ると踏んでいたのです。 王子は重たい気分になってしまいました。 「それとも、あの歌声はただの幻だったのだろうか…。」 カインの頭に一番嫌な想像が浮かびました。 『そんなはずはない』 と頭が否定しても、心の何処かが 『そうだったかもしれない』 と呟きます。 カインは本当に歌姫がいたのかさえも、だんだんと分からなくなってしまいました。 「もう一度、あの浜辺へ行ってみよう。もしかしたら手掛かりが掴めるかもしれない・・・。」 カインは決心すると、もう一度城を抜け出す準備を始めました。 そして同時に、こう呟きました。 「もし、これで何の手掛かりも掴めなかったら、歌姫の事はきっぱりと諦めよう・・・。」 ,
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