青年の憂鬱

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その頃、カルファナの消えた砂浜では、一人の美しい青年が首を傾げていました。 先ほどまで、確かに歌が聞こえていたはずの岩の陰には誰も居ません。 「あの美しい声の持ち主は、逃げていってしまったのだろうか…。」 青年は悲しげな面もちで呟きました。 実はこの青年、名をカインと言い、このあたり一帯を治めている王家の長男、つまり王子でした。 彼の城では、今、王子のお妃を決めている真っ最中。毎日毎日パーティーやお茶会を開いては、色んな国の姫を呼んで王子と会わせています。 しかし、来るのは高飛車で傲慢で派手好きな姫ばかり。 本当にお妃にしたいと思える女性(ひと)は居ません。 「私は、ただお金持ちで美しいだけの姫と結婚したくはありません。もっと心が美しく、謙虚で優しい女性(ひと)を連れて来て下さい。私は、そういう女性(ひと)なら姫でなくても構わないと思っています。」 ある日、カインは父である国王にこういいました。 ―――しかし、 「なにを言い出すのだカインよ。王子と結婚するのは姫でないといかん。それに、お金持ちで位の高い姫と結婚した方が国のためになるとは思わんか?あまりわがままを言うんじゃない。」 国王はそう言ってカインの願いを聞いてはくれませんでした。 そして今日も例のごとくお金持ちの姫を呼んでは、なんとかカインと結婚させようとしています。 カインはそんな毎日が嫌になり、こっそりと城を抜け出して来たところでした。 ,
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