はじまり

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私が高校生になり,落ち着いた頃には父は,入退院を繰り返しながらもはた目には健康に見えていました。 ただそのことが災いしたのか,病室を抜け出し,タバコを買ってしまうことが何度かありました。 私にはタバコを吸う気持ちなんぞチリ程もわかりませんでしたから, 「オカンに心配かけんな。タバコなんかやめてくれ。」 と言ったことがあります。 すると父は 「まだやりたいことが残ってる。まだ死ぬつもりはない」 とはっきり言いました。 が,同時に 「俺が死んでも君らがその後困らんようにはしてある」 とも言いました。 当然私には納得がいきませんでした。うまく言葉にすることができずに 「そんな問題ちゃうやろ」 としか言えませんでした。 もっと俺が器用に喋れたら結果は変わったんかな? あなたが死んで数年たつ今も家族はちゃんと生活できてます。それは心から感謝しています。けど,もう少しだけ自分の体の心配もできてたら,もしかしたら今も幸せに生きていられたん違いますか?
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