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そこは殺風景なほど余計な飾りが無い、閑散としたビジネスホテルの一角だった。
広い受付の奥に、白人の男がひとり佇んでいる。
肩ほどのブロンドヘアは艶やかな碧色に輝き、その風貌はおよそひなびたビジネスホテルに似つかわしくない。
長い睫毛は青い瞳を幻想的な金色で彩っていた。
黒い細身のスーツは、華奢な体躯をより一層強調する。男は、そのスーツにアンバランスな程少年の面影を残していた。
中性的な顔立ちに映えるミルク色の肌は、まるでバロック絵画から抜け出したアドニスの様だ。
しかしその表情は冷たく、何か人間的なものが欠如した雰囲気を醸し出していた。
「環(たまき)さん」
声を掛けられた白人の男は顔を上げた。青い瞳に感情は伺えない。
「今日はどなたが来られるんスか」
質問したのは、いかにも体育会系を思わせる大男だ。
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