誰かの為の“人気者”

3/9
前へ
/20ページ
次へ
「わざわざありがとうございます。」 「そんなの気にしなくていいのよ~。一応、うちのアパートの住人だし、心配だものね。」 今、私は弘樹のアパートの大家さんと一緒にいる。 鍵を借りようと事情を話したところ、一緒に弘樹の部屋に行くことになったのだ。 「それにしても……あなた弘樹くんの彼女なのかしら?」 「そんな関係じゃありませんよ。後で友達も来ますし、先に様子を見に来ただけです。」 「そうなの。弘樹くんも隅に置けないわね~。こんな綺麗な子が友達だなんて。」 「ありがとうございます。」 愛想笑い。 この質問が来ることは予想していたので、難なく答えられた。 それに、弘樹と私は本当にそんな関係ではない。 同じ大学の同じ学部、同じサークルに入っているただの友人だ。 ………弘樹にとっては、恐らくそうだと思う。 「着いたわね。」 『ピンポーン』 呼び鈴を鳴らす。 …………返事はない。 「これは、本当にヤバいかもね~。とりあえず、入ってみようかしら。」 ガチャ 鍵を開けて弘樹の部屋に入った。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加