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秋風「この勝負……負けられないっす!!」
おそらくあの五人の中で最もやる気があるのが、この秋風だろう。先程までの会話を見るに、これまでにも色々とあったらしい。
秋風「これに勝てば……向こう一週間は食事当番からは解放されるっす!!」
……目頭が熱くなりそうだ。彼は、一体今まで他の四人からどんな仕打ちを受けてきたのだろうか。
虎もその気迫を感じ取ったのか、襲い掛かるのを躊躇っているようだ。その目に哀れみが見えたのは、おそらく僕の気のせいだろう。
秋風「さあ、来るっす!!」
それが、虎から躊躇いを失わせた。
秋風へと疾走し、その牙をさらけ出す。巨大なそれに噛まれれば、人間など一瞬で絶命するだろう。
秋風「走ってきてくれてラッキーだったっす」
秋風は、持っている二本の剣の内一本を手にとり──。
・・・・・・・・
地面に突き刺した。
すると、彼の剣から障気のような何かが発生し──。
・・・・・・・・・・
虎の足元が崩れ落ちた。
一体何が起きたのか……。それは、彼の次の言葉で明らかになる。
秋風「いや~、飛び掛かって来なくてよかったっす。さすがに生き物腐らせるのは寝覚めが悪いっすからね」
そう、彼がしたのは、地面の腐食──。
地面を腐らせ、地盤を脆くし、落とし穴を作り出した。
秋風「さて、そしたら戻るっす」
そう言って、剣を抜き、数歩踏み出したその時──。
・・・・・・・・・
秋風の足元が崩れた。
秋風「うえぇぇえぇっ!?」
奇怪な叫びをあげる秋風……。一体何があったのか。
秋風「そ……そっか、腐食させたエリアに入ったんすね!?」
彼は虎が直進してくるとは限らないため、自分から見て横に広く地面を腐食させたらしい。そのため、歩いている内にその範囲内に入ってしまったようだ。
秋風「そ……想定の範囲外だあぁぁぁぁぁ!!」
今度は大丈夫ではないようだった。
何はともあれ、この勝負は、彼の勝ちと言っていいだろう。
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