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五人の男女が、深い森の中を歩いている。この森は獣が出るという噂があるため、近隣の人間は立ち入らない。仮に立ち入ったとしても、こんな深いところまでは入らないだろう。また、先頭の男が地図を見ながら歩いていることから、彼らが旅人であることは容易に予想がついた。
???「なあ、秋風ー、まだ抜けられねえのか?」
手甲、脚甲をつけた男が、先頭の男に尋ねる。
秋風「すんませんアティルさん、まだみたいっす」
どうやら、先頭を歩いていた青年は秋風と言うらしい。二本の剣を持つその男は、質問をしたアティルという男を振り向くことなく答えた。
???「けど、さすがに時間がかかりすぎてませんか?」
???「秋風……地図見間違えたりしてんじゃない?」
今度声を発したのは二人の少女だ。年齢は十七~八といったところだろうか。
最初に声を上げた方はおっとりのんびりとした印象を受ける。しかし、背中に背負った弓が、彼女がただの少女ではないことを物語っていた。
もう一人は、おっとりというよりけだるそうな印象を受ける。血が足りていないのだろうか……少しふらついている。
秋風「乙姫さんもミナトさんもせっかちっすねー。だから男が寄り付かないんじゃないっすか?」
乙姫「えー?そうですかー?」
ミナト「……血の海に沈める(小声)」
……乙姫はともかく、ミナトは怒らせてはいけないようだった。
秋風「怖いこと言わないで欲しいっす……。サーティーさん、さっきから何も言ってないっすけど、どうかしたんすか?」
サーティーと呼ばれた男は、ぼうっと上を見上げていたようだが、秋風の言葉に前を向く。
ちなみに、この男は他に比べて特徴に乏しい。剣を持っていることと眼鏡をかけていることくらいだが、このメンバーは皆武器を持っているので、実質眼鏡だけが彼の特徴だ。
サーティー「秋風ー、ちょっち地図見して」
秋風「いいっすけど、なにするんすか?」
サーティー「ちょっと確認」
秋風は地図を渡し、サーティーはそれを見つめる。
サーティー「秋風……」
秋風「なんすか?」
サーティー「これ……違う場所の地図」
その時……時間が止まった。
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