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高虎の思考は解らない
毎日、飽きもせずによくあんな言葉が言えるものだ
彼が己を好いていることは、この眼が見えずとも分かる
しかし…吉継に返せるものは何もない
それは、高虎も分かっている筈だ
それなのに…
「…好きだぜ。吉継」
彼は己に何を望んでいるのだ?
関ヶ原から己を連れだし…高価な薬や高名な医師まで用意して…
己の小姓の五助も助けた
しかし、彼は何も言わない
己の元に来ても…体調を聞かれ…共に食事をして話をするだけ
何を考えているか…まったく理解出来ぬのだ
「…高虎。君は“好き”だと言うが…一体私に何を望む?私は、この通り眼は見えぬから出来ることは少ないが…君には返しきれない程の恩がある」
「あんた…そんなこと考えてたのかよ。俺も何も言わねぇんだから黙ってれば良かっただろ。何で言ったんだ?」
「馬鹿正直な親友がいるからだろうな。本来の私ならば黙っていただろうが…」
三成のことを考えると心苦しいが…
私は彼を選んでしまった
そのことを謝ることは出来ぬのだろう
私は…間違えたわけではないのだから…
「…あんたは何もする必要はねぇよ。俺が勝手に好きだって言ってて…。勝手に薬とかを用意してんだからよ。少しでも気をひきたいだけなんだからよ」
「しかし…私は…ただ面倒をかけるつもりはない。…何か私に出来ることはないか?」
「…そうだな…。あんたはそういう奴だったな。…じゃあ………」
それから、高虎に告げられた言葉は…願いというよりも約束に近いものだった
それは…『私が彼に遠慮をしないこと』
それが、彼の願い
もう、高虎の考えが解らぬと悩むことはなさそうだと言えるだろう
今は己も彼に“好き”だと告げているのだから
今の想いのすべてを込めて…いつか彼に告げられなくなる日までは…
しつこいくらいに…愛を告げよう
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