その瞳には勝てぬ(BASARA・親就)

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我は毛利元就 中国地方を統べる、日輪の申し子ぞ 今我には…好きな者がおる 今日は、その者のことを愚劣なる貴様らにも教えてやろう …その者の名は長曽我部元親 四国の大名ぞ 奴は昔…姫若子と呼ばれるようなものであった しかし…何を間違えたか西海の鬼と呼ばれるほどになりおった 我とは姫若子と呼ばれていた時に初めて会ったのだが…再会した時には既に鬼 分かるはずがない それを…あやつは我を見た途端に… 『松寿丸!』 …と気安く呼びおった 再会したのは厳島での戦の最中 ふざけるにも程がある 当然、我はその言葉に対する無視と輪刀による攻撃で返してやったわ 厳島の戦は他軍による邪魔が入り、長曽我部を討つこと叶わず…うやむやになったが その三日後…奴は安芸城に一人で来て我に言った 『同盟組もうぜ。毛利』 三日前に戦をしていた者が、ぞ! 聞けるはずもなく、我は断った しかし奴はその後も毎日来た 断っても断っても…来る いつだったか…我は聞いたことがある 何故、毎日来るのかと すると長曽我部は… 『何でって…毛利が好きだからだぜ?他に理由なんてねぇよ』 …呆れた 怒りさえも浮かばなかった だが…あのように言える長曽我部が…羨ましくも感じたのだ それと同時に…今まで我が感じることもなかった胸の高なりを感じた …だが解らなかった その胸の高なりは何故起こるのか 日輪の申し子である我が…恋などする筈はない だが…我にもその心は止められなかった そしてついに…我はあの日、言ってしまった 安芸城に長曽我部が来なかった日があった その翌日…我は土佐に行った 『何故、昨日は来なかった!』 『いや、俺も内政あるんだけど…。…もしかして、待ってたのか?』 『…っ!…知らぬわ!我は知らぬ!何故貴様が気になるのか…!我は知らぬぞ!』 『…それ…俺のこと好きっていうことか?』 『……っ!…知らぬわ!自分で考えよ!』 『…好きだぜ。毛利…いや、元就』 それから…我は長曽我部に毎日来るように言った そうしたら…あやつは我に笑った 同盟を結んだ今もそれは変わらぬ だから…今日も来る …っ別に長曽我部が…チカが来ることが嬉しいわけではないぞ!? 我は嘘は言わぬ! 人間の鏡ぞ! 『ナリーっ!』 ほら………来た では我は行く 我は暇ではないのだからな 今日の話はここで終いとする 貴様も早く戻るがよかろう…
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