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どうしたものかと考えながら箸が止まらない
『父ちゃん、アレ直してもらったら』
『ん?あぁスズコ(娘さん)のが?兄さんバイグ直せっが?』
『重症でなければ…』
食事も終わって父ちゃんが言うには娘さんのスクーターらしくエンジンがかからず直すのも面倒で何年も放置してあると言う
『兄さんの気が済むならそんでええがら。直らんでも構わんでの、俺は8時っがら手伝い仕事行ぐから帰る時は気付けての』
『え⁉あ⁉すいません』
自分が休みだからと世間も休みと思い込んでいた
時計は7時
表に出てスクーターと工具類の場所を教えてもらうと父ちゃんは俺のバイクをしげしげと眺めながら感心していた
『でっかいのぉこれ幾つだ?』
1100ccと言うと更に驚いた
💡
『なんだったら後ろに乗ってみます?』
『ええんか?ちょっと待ってろ』
いそいそと母屋に入ると色褪せたピンクのヘルメットをかぶって出てきた
恥ずかしがりながら言った
『スズコんだ(笑)』
恥ずかしがりながらも笑う顔が可愛い
エンジンをかけ、ステップをおろして跨がらせる
『腰に手廻してがっちり掴まってて下さいね』
不安げな声の父ちゃん
『少しでいいがんな』
『はい(笑)』
ゆっくりと道路に出て40キロで閑かな景色の中を走る
『大丈夫ですか?』
『今少しスピード出してええど』
60キロ…、80キロ…
『大丈夫ですか?』
『大丈夫だぁ』
300メートルほど走ってUターン
ゆっくり加速して100キロまで出した
庭先で止まると降りた父ちゃん
『たまげたなぁ、何キロ出した?』
『100キロですよ(笑)』
『かぁ~~速え~なぁ、タマ縮んだわ』
自分の親父を乗せた時も同じように言った事を思い出した
『んじゃ俺ぁ仕事行ぐから気つけて帰り』
『本当に親切にありがとうございました。』
『なんもなんも、久しぶりに美味い酒だったわ。また来たら寄ればいいから、ほんじゃの』
そう言うと父ちゃんは軽トラックに乗り込み仕事に向かった
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