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   ◇    結果として私はミートボールとシュウマイもお裾分けした。彼の哀愁漂うお弁当に、心優しい私は同情を禁じ得ないのだ。  彼は少ないオカズで次々にご飯を口に放り込んだ。綺麗に完食。  私もちょうど弁当箱の蓋を閉めるところだった。  二人共手のひらを合わせて頭を下げる。   「ごちそうさまでした」    私は弁当箱を巾着袋にしまい、ポケットティッシュを取り出した。 「鼻水出てるぞ後輩」  笑いながら彼に手渡す。  何やら小動物然とした表情で私を見つめる後輩。いつもとは違う可愛らしさはあるが、鼻水垂らしたまま見つめ合ってもしょうがない。早く拭け。   「最近いっつも風邪気味じゃない?」 「そーなんですよね。風邪引きやすくなった気がします」 「ちゃんとした物食べなきゃ」 「プチトマトとかですね。わかります」  私は何も言わない。  彼は私に向かって一笑いしてから、しょうがないというように話題を変えた。   「そーいえば先輩んちの卵焼きっていつもめちゃくちゃ甘いっすよね」   「えっ、そう? 普通じゃない?」 「普通じゃないですよ。先輩んちの卵焼きは卵料理と言うよりは卵菓子に近いです」   「うちはね、おばあちゃんの代から卵焼きには砂糖入れるの」 「へぇー、仲良くなれそうだ。婿に行こう。うちの卵焼きは何も入れません。フライパン味です」  フライパン味、というのは卵の前に炒めた物がフライパンに残した味ということらしい。ちょっとよくわからない。    彼は突然何かに気が付いたかのようにキッと私に向かって目を見開いた。 「もしかして先輩、甘い卵焼きで僕の糖尿病を悪化させて殺す気ですか!?」 「いや、自分で取ったんじゃん」   「だからゆくゆくは、僕と結婚して朝昼晩と毎日三食卵焼きを欠かさない甘い結婚生活を送らせる気ですね」 「それって私は君のこと好きなの? 嫌いなの?」   「好きです」 「いや、そうでもないです」   「僕は先輩のこと好きです」 「私は後輩のことそうでもないです」  
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