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階段を上りきると見馴れた扉が僕を待っていた。鈍い銀色をしているが学校の扉にしては綺麗なほうだ。
埃っぽい空間に僕の風邪気味な鼻腔がむずがる。
一つ盛大なくしゃみをしてから、僕はドアノブに手をかけた。鍵はかかっていない。
屋上に出ると刺すような陽光が頭上から降り注ぐ。太陽は僕のちょうど真上にあって、夏のお昼を報せていた。
高く澄んだ空は海みたいな青。遥か向こうにそびえる入道雲は洗い立てのような白。耳から離れないBGMは蝉の鳴き声。
どうしようもなく夏だった。スクール水着の季節だった。
プールから届くカルキの匂いがさらにそれを際立たせた。
僕は薄汚れた上履きのまま、壁にもたれた。
夏休みを目前に控えた七月の風が生暖かく流れていく。鼻水がスッと消えた気がした。
どこからか洩れてくる昼休みの放送を遠くに聞きながら、僕はワイシャツのボタンを一つ外した。
それからチュッパチャップスの棒切れを口の端にくわえる。
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