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  「いやでも先輩、僕の友達に言わせれば僕はもうオッサンなんだそうですよ」    隣のクラスの友達が言うには、 「人は生まれてから中二までが花だよ。その後は見るに耐えないね」  こいつも金星マニア同様どうかしてる奴。少女趣味で更に言えば幼女趣味。少年側に興味があるのかは恐くて聞けていない。  こいつに言わせりゃ隣の隣のクラスの学校一の美少女さえ、ババアなのだろう。  きっと半分はネタで言ってるんだろうけど、もう半分がマジかも知れないのが困ったところ。   「僕もそいつも既に余生に突入してるらしいです」  先輩も流石に引いたようだった。せわしなく動いていた箸が止まり、僕を薄目で睨む。 「そりゃーさロリコンの話でしょ」  またしてもそのとおりだった。 「それにその理論でいくと私もかなりのオバサンて事になるんだけど」 「まぁそういうことなんでしょうね」    次の瞬間には先輩の箸に僕のプチトマトが挟まっていた。器用さに感心。 「僕の数少ないところのオカズを!」  実際は数少ないどころではない。ただ一つだ。内心では、奪うオカズを選ばせない弁当を申し訳無く思った。 「私だってまだまだセブンティーンだ」 「確かに先輩ならバイク盗むくらい朝飯前でしょうけど」  またしても奪われる唯一のオカズであるところのプチトマト。 「あぁ! もうそんなに僕のオカズを奪うようなら今夜のオカズは先輩で――」    脳が、揺れた。  何かが瞬間的に風を切るような音がして、それから僕の視界が傾いた。  真横から伸びた拳が顎を掠めたらしい。ボクシングでも最も守るべきジョーをテクニカルに射抜かれたのだ。夏風邪で重い頭はよく揺れる。  軽い脳震盪で数秒間意識が絶たれた。  下ネタにはことさら手厳しい先輩。気付いた時には僕の弁当箱の中身は炭水化物のみになっていた。  
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