駆け抜ける青春

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一般的に、学校から解き放たれた若者は、部活で汗を流したり、友達や彼女と遊んだりするのであろう。 オレはと言うと、HRが終わると同時に靴箱に向かい、風神の呼称に相応しい速さで帰宅していた。 そして、Playstation2のスイッチを点けるのだ。 読み込むディスクが、バイオハザードやウイニングイレブン、ドラゴンクエスト、ファイナルファンタジーなどならば、この行動にも納得出来るであろうが、残念なことに我が家のPS2が読み込むのは、押忍番長のシミュレーションゲームなのだ。 ちなみに勘違いしている人が多いが、正しくはシミュレーションであって、シュミレーションではない。 このシミュレーションソフトはとても優れている。 実際の番長と同じシステムで作られている為、家庭で本物と何ひとつ遜色のない番長を回すことが出来るのだ。 これは素晴らしい。 このソフトを買いさえすれば、後はびた一文使うことなく番長の各設定のデータをとることが出来る。 つまり、オレの放課後の時間は全て番長のデータをとることに費やしていたのだ。 設定1~設定6までを、幾度も1万回転まで回し、それぞれのデータを克明に記録して行く。 それがオレの放課後だ。とにかく、ありとあらゆることを記録していった。 他に記録出来るものがないくらい記録していった。 休みの日は早起きだった。 何故なら、パチンコ屋の整理券をもらわなければいけないからである。 順番待ちをせずに、いい台に座れると思ったらいけない。 可能な限りパチンコ店に通い、打たなくても、各台の大当たり回数、大当たり確率、店側がどの辺の台に設定を入れてるかなどをチェックする。 そうすると、必然的に座るべき台が浮かび上がって来るのだ。 その台に確実に座るためには、誰よりも早く店に入る必要がある。 となると、この早起きは当然のものであって、やらなければいけないこととなる。 これは、何も休日に限ったことではない。 重要な授業や行事よりも、番長全台設定6イベントの方が大事である。 これは自明の理であって、このイベントを見逃して授業に出るなどという愚行を行えるはずもない。 これに異を唱える者が居たら名乗り出るといい。 オレが一晩男の花道を耳元で歌い続けてやる。 常に出席数、遅刻数、さらには単位を落とすか落とさないかのぎりぎりで計算をしながら店に通っていた。 知的で賢さが溢れていたオレだから出来る所業だ。
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