痕跡

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2010年、8月。 頭上から降り注ぐ熱気が、地面をジリジリと焼いていた。 「暑い…暑い…暑い…」 独り言のように何度も呟きながら、自転車のペダルを必死に踏み込む。 人通りの無い所をひた走る。 やっと目的地へ到着した。 自転車を降りて鍵をかける。 その場所はいつもと変わらず、どこか淀んだ空気を含んでいた。 俺、水野 皇季(みずの こうき)は今、廃ビルの中にいた。 なぜ俺がこんな所にいるか? それは追々わかることだ。 ザリ、ザリ。 歩く度に足下の瓦礫が音をたてる。  
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