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細く荒れた廊下を歩いて行くと、幾つか扉の並んだ場所に出た。
俺は迷わず左から2番目のドアノブに手をかけ、勢いよく持ち上げた。
同時に廃ビルに似合わない光景と、煙草の嫌なにおいが広がる。
「いらっしゃーい、皇ちゃーん」
低く通る声が耳を突いた。
部屋の一角に置かれたソファからだ。
「気持ち悪いノリはやめろよ、立夏」
立夏と呼ばれた男はカカカ、と乾いた声で笑った。
加えた煙草が不安定に揺れる。
「さっきみたー昼ドラよぉ」
彼の名は千葉 立夏(ちば りつか)。
この廃ビルの持ち主、といったところだ。
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