わからない

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家に帰ってきたのはオレとお父さんだけだった。   弟はまだ保育園児で小さかった。 だから病院の近くに住む従弟の家でしばらく暮らすことになった。   いつも居るはずの人がいない生活が始まった。   家事をするのはおばぁちゃん。 案の定、粉料理や煮物のオンパレード。 かろうじてカレーは作れたが、ハンバーグなどの子供の大好きな肉料理がでてくることはなかった。   お母さんには週に1度、お父さんが休みの時だけ会いに行けた。 それが小学校3年生のオレには楽しみで仕方がなかった。   お母さんは病院のベットの上でいつも編み物をしていた。 何を作っているのか…。 オレは無口な子供だった。 お母さんの問いに答える程度で、自分から話すことは何もなかった。 病気のことを何も知らないのはそのせいだろうか。 それとも興味がなく、ただ聞いていなかっただけだろうか。   病院の帰りにはいつもお父さんがオモチャを買ってくれていた。 それも病院に行く楽しみの一つでもあった。
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