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その夜、千波は布団にくるまって声を限りに泣いた。
5年分の思い出が次から次へと蘇り、それが幸せであればあるほど、胸が引き裂かれるように痛かった。
良平とはハタチの時に友人の紹介で知り合い、一年近くの友人関係を経て恋人同士になった。
子供っぽくて、ちょっと優柔不断なところもあったが優しくて、一緒にいると楽しかった。
ちぃ、ちぃ、と二人きりになると甘えてきて、友達にもはばかることなく千波を自慢の彼女だと紹介した。
寂しがりやで、どんなに忙しくても三日と空けずに会っていた。
そんな良平に呆れを感じつつも、愛しくて。
確かに昔のようにときめくことはなくなったが、その分確かな絆ができていると、そう信じていた。
だからこそ、疑いもしなかった。
会えなくても大丈夫だと。
良平は事情をわかってくれている、と。
信じていたからこそ、ショックの大きさもひとしおだった。
まさか、こんな形で裏切られるなんて。
夢にも思っていなかった一一…。
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